Eun-kyu Baek·

売上1位のチャネルが利益率では最下位でした — チャネル別純マージンの計算方法

同じチャネルを売上と純マージン率でそれぞれ並べてみたところ、順位がほぼ完全に逆転しました(順位相関 -0.943)。売上の73.6%を生み出す自社モールはマージン率14.6%で最下位、売上構成比わずか2.4%のチャネルがマージン率67.2%

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同じチャネルを売上と純マージン率でそれぞれ並べてみたところ、順位がほぼ完全に逆転しました(順位相関 -0.943)。売上の73.6%を生み出す自社モールはマージン率14.6%で最下位、売上構成比わずか2.4%のチャネルがマージン率67.2%で1位でした。明暗を分けたのは手数料ではなく、チャネルに紐づく広告費でした。

コマースブランドのサンプルデータ · 12か月間 · 注文 約38万件 / 購入者 約31万人 · チャネル7グループ。各章には、Laplaceでその数字を確認する画面と設定もあわせて記載しています。

本レポートの数値は実際の取引データではなく、Laplaceのベンチマーク指標の分布を反映して生成したサンプル値です。特定の顧客企業の実数値ではありませんので、絶対値ではなく傾向を把握する目的でご参照ください。


PART 01 · まずは — どの画面を開くか

すべてのメニューを見る必要はありません。このレポートの数字が出てくる画面だけを厳選しました。

メニュー画面このレポートのどの数字か優先度
P & L分析チャネル別損益チャネル別純マージン率・マージン貢献比率優先度1
データ管理チャネル・広告アカウント連携広告費をチャネルに紐づけるための前提優先度1
データ管理基礎商品・原価登録原価の層 — これがないと純マージンではなく売上総利益までしか出せません優先度1
P & L分析決済手段別損益自社モールの実効決済手数料率優先度2
ユーザー分析初回購入 / リピート購入チャネルの役割検証 — 獲得チャネルは本当に顧客を獲得しているか優先度2
広告分析流入分析自社モールへの流入広告を自社モールに紐づける優先度2
カスタムダッシュボードチャネル別マージン率の推移チャート段階的に下がっていくチャネルを早期に検知優先度3

難しいのは計算ではなく、データを集めることです


PART 02 · まずは自己診断 — 4つのうち1つでも答えに詰まるなら

  1. チャネル別の純マージン率(すべての手数料・広告費を差し引いた後)を、今すぐ数字で言えますか?

  2. 売上順位と純マージン順位が同じか違うかを確認したことはありますか?

  3. 広告費をチャネル別に紐づけて管理していますか?それとも「今月の広告費総額」だけで見ていますか?

  4. 自社モールへ誘導するプロモーションに何%まで使っても利益が残るか、損益分岐点を計算したことはありますか?

チャネルごとにコストの「層」が異なります

コストの層自社モールオープンマーケット・プラットフォームオフライン・薬局流通
① 販売(マーケット)手数料なしあり — カテゴリーにより異なる買取型のため手数料なし
② 決済(PG)手数料あり — 決済手段により異なる販売手数料に含まれる場合が多い該当なし
③ 物流・フルフィルメント自社配送費フルフィルメント利用時は別途課金納品単価に反映
④ 広告・プロモーション流入広告費チャネル内広告費 + プロモーション負担出店費・催事負担

ポイントは2つです。1つ目は、同じ「手数料」でもチャネルによって含まれる範囲が異なること。自社モールの1桁台の決済手数料と、プラットフォームの2桁台の販売手数料を同じ行で比較するには、4つの層をすべて分解し、同じ基準で組み立て直す必要があります。

2つ目は、最大のコスト層が精算書の外にあるチャネルが存在すること。広告費は精算とは切り離され、別途請求されるケースが多くあります。精算書だけを集めると、広告費という最大のコスト層がまるごと抜け落ちた「偽の純マージン」が計算されてしまいます。

この記事には業界ベンチマークはありません

次に見る画面 — フレームはわかりました。では本当に順位が逆転するのかを見ていきます。


PART 03 · 優先度1 — 2つの基準で並べると順位が逆転します

ブランドDは韓国の健康食品ブランドです。自社モールが売上の4分の3を占め、海外自社モール・ヘルス特化型プラットフォーム・大手プラットフォームのフルフィルメント・薬局流通・オープンマーケットもあわせて運営しています。開封すると返品が難しいカテゴリーのため、クレームよりもコスト構造がマージンを左右します。

数字を読む前に

Laplaceで見る場所 — P & L分析 › チャネル別損益

設定方法

  1. 売上基準を返品・キャンセルを反映した純売上に統一します。チャネルごとに注文時点と購入確定時点が混在していると、1行目から違う数字を比べることになります。

  2. 広告アカウントをすべて連携します。広告費がチャネルに紐づいていないと、このレポートの結論はまるごと消えてしまいます。

  3. 集計期間は12か月に設定します。特定チャネルの季節イベント1回で順位が揺らがないようにするためです。

  4. 並び替えを純マージン率に切り替えます。このワンクリックこそが、このレポートのすべてです。

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売上順位 × マージン率順位の相関売上順位 × 純マージン額順位の相関売上1位チャネルのマージン率チャネル間のマージン率格差
-0.9430.77114.6%(最下位)52.6ポイント
チャネル売上構成比%販売・決済手数料チャネル帰属広告費原価純マージン率マージン貢献比率%格差(ポイント)
自社モール73.65.448.231.814.649.0-24.6
海外自社モール9.40.041.624.134.314.7+5.3
その他小規模チャネル7.28.822.430.138.712.7+5.5
ヘルス特化型プラットフォーム3.127.28.428.935.55.0+1.9
大手プラットフォームのフルフィルメント2.719.30.027.653.16.5+3.8
薬局・ドラッグストア2.40.04.628.267.27.4+5.0
オープンマーケット1.66.10.029.464.54.7+3.1

純マージン率 = 100 − 販売・決済手数料 − チャネル帰属広告費 − 原価(チャネルの純売上 = 100)。マージン貢献比率 = そのチャネルが生んだ純マージン ÷ 全体の純マージン。

出てきた数字の読み方

  • 売上順位とマージン率順位がほぼ完全に逆順です。順位相関は-0.943 — 売上1位の自社モールがマージン率では6位、売上5位の薬局流通がマージン率では1位です。

  • 逆転するのは「率」であって「額」ではありません。純マージン額の順位と売上順位の相関は0.771と、依然として高い水準です。売上構成比が圧倒的なチャネルは、マージン率が薄くても金額では1位になります。だからこそ2つの指標をあわせて見る必要があります — 額は規模を、率は効率を物語ります。

  • マージン率の格差は52.6ポイントです。14.6%から67.2%まで。同じブランド、同じ商品なのに、どこで売るかによって手元に残るお金が4倍以上も変わります。

次に見る画面 — 逆転することはわかりました。しかし、どの層が逆転させたのかはまだ見えていません。


PART 04 · 順位を逆転させたのは手数料ではなく広告費でした

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出てきた数字の読み方

  • 手数料が最も安いチャネルが、広告費は最も高くついています。自社モールの手数料は5.4%で、ヘルス特化型プラットフォーム(27.2%)の5分の1ですが、広告費は48.2%と、同チャネル(8.4%)の5.7倍です。その結果、マージン率は14.6%対35.5%と逆転します。

  • プラットフォーム手数料は「トラフィックの対価」でもあります。手数料を払わないチャネルは自らトラフィックを買ってこなければならず、このブランドでは買ってくるほうが高くつきました。「手数料がもったいないから自社モールに寄せる」という判断を成り立たせるには、まずこの表を見る必要があります。

  • 広告を使わないチャネルのマージン率が圧倒的です。薬局流通は67.2%、オープンマーケットは64.5%。ただし、2つの売上構成比を合わせてもわずか4.0%です — マージン率が高いチャネルと、規模をつくるチャネルは別物です。

  • 原価の層はチャネル間でほとんど差がありません(24.1–31.8)。同じ商品を売っているので当然です。動かせる層は手数料と広告費の2つだけです。

次に見る画面 — どの層が問題かはわかりました。では、この表で何を決めるのかです。


PART 05 · この表ひとつで下せる3つの意思決定

意思決定① 広告予算の再配分 — 基準を「売上順位」から切り替えます

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  • 自社モールは売上の73.6%を生み出しながら、マージンは49.0%しか生んでいません(-24.6ポイント)。それ以外のチャネルは、すべてマージン貢献が売上構成比を上回っています。

  • 増額の最優先は「マージン率が高いのに売上構成比が小さいチャネル」です。この表では薬局流通・オープンマーケット・フルフィルメントが該当します — 3つとも広告費は4.6%以下なのに、マージン率は53.1%以上です。

  • 自社モールは、増額よりも広告効率の改善が先決です。今の構造のまま自社モールに予算を上乗せすると、マージン率14.6%の売上が増えるだけです。

意思決定② チャネル別の役割定義 — ただし根拠が必要です

すべてのチャネルが収益チャネルである必要はありません。マージンが薄くても新規顧客の流入が大きければ「獲得チャネル」、マージンが厚ければ「収益チャネル」と役割を分けることができます。そうすれば「このチャネルのマージンはなぜこうなのか」という議論が、「役割に対する成果はどうか」という議論に変わります。

ただし、獲得チャネルと位置づけるには、そのチャネルから流入した顧客が実際にリピート購入しているかを確認できなければなりません。ところが、このブランドではその確認が半分しかできませんでした。

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マーケット系チャネルでは、リピート購入の確認そのものができません

意思決定③ 自社モール誘導プロモーションの損益分岐 — このブランドは逆でした

一般的にはこう言われます。「オープンマーケットと自社モールのマージン率格差が8ポイントなら、自社モール限定ポイントに売上の3–4%を使っても利益が残る」。これは格差が自社モール側に有利な場合の話です。

比較自社モールのマージン率比較チャネルのマージン率格差自社モール誘導の余力
vs 薬局・ドラッグストア14.6%67.2%-52.6ポイントなし
vs オープンマーケット14.6%64.5%-49.9ポイントなし
vs 大手プラットフォームのフルフィルメント14.6%53.1%-38.5ポイントなし

格差はすべてマイナスです — 今の構造では、誘導すればするほど損をします

次に見る画面 — 3つの意思決定は、表が正確であるという前提の上に成り立っています。この表を初めてつくるときに陥りがちな落とし穴が3つあります。


PART 06 · 落とし穴 — この3つを確認しないと表は間違います

落とし穴① 物流・フルフィルメントの層がまるごと空白になっている

このブランドでは、販売者負担の配送費が全チャネルで0として取り込まれています。登録していなかったためです。そのため、上の表のコスト層は3つ(手数料・広告費・原価)だけで、PART 02で触れた4つ目の層は測定されていません。

影響はチャネルによって異なります。自社配送を行う自社モールは、実際のマージン率が表よりさらに低く、フルフィルメントを使うチャネルはそのコストがすでに手数料に含まれているため、差は小さくなります。つまりこの表は自社モールに有利に傾いているにもかかわらず、自社モールが最下位なのです。配送費を登録すれば、格差はさらに広がります。

落とし穴② 広告費をチャネルに紐づけないと、このレポートはまるごと成り立たなくなる

広告費を「今月の合計いくら」だけで管理していると、チャネル比較はできません。少なくとも媒体 → ランディング先チャネルの基準で紐づけてください。プラットフォーム内広告はそのプラットフォームに、自社モールへの流入広告(検索・SNS)は自社モールに。複数チャネルにまたがるブランド広告がある場合は、チャネルの売上構成比で按分するところから始めるだけでも、何もしないよりはるかにましです。

落とし穴③ 自社モールの実効決済手数料 — 通説とは違いました

「自社モールの決済手数料はひとつの数字ではない。簡易決済の比率が高いと、実効手数料率は思ったより高くなる」— よく引用される注意点です。このブランドでは当てはまりませんでした。

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決済手段決済比率%手数料率%
クレジットカード66.45.42
簡易決済20.85.31
口座振替10.15.40
キャリア決済1.85.46
バーチャル口座0.95.19
実効手数料率(加重平均)100.05.39

決済手段ミックスは、このブランドの問題ではありませんでした

点検項目基準満たさないと
売上基準の統一返品・キャンセルを反映した純売上1行目から違う数字を比べることになる
広告アカウント連携全媒体 → ランディング先チャネルに紐づけチャネル比較そのものが不可能
販売者負担の配送費チャネル別に登録物流の層がまるごと抜け、自社モールに有利に傾く
商品 ↔ 原価のマッチング率95%以上未マッチング商品の原価が0 → マージンが過大に
決済手段別の手数料率実効率 = ミックスの加重平均想定値と実際がずれる(ただし幅は小さい場合もある)

月次・四半期ルーティン

周期やること完了基準
W1売上基準を純売上に統一し、広告アカウントを全媒体で連携。販売者負担の配送費を登録4つのコスト層がすべて埋まったチャネル表1枚
W2P & L分析 › チャネル別損益で、売上順の並び替えを純マージン率順に切り替え、2つの順位を並べて記録順位が3段階以上動いたチャネルのリスト
W3売上構成比とマージン貢献比率の格差が大きいチャネルをマーク。増額候補と効率改善候補を切り分けるチャネル別の広告予算増減案
W4ユーザー分析 › 初回購入 / リピート購入でチャネルの役割を検証。検証できないチャネルはその旨を明記チャネル別役割定義書(検証可否を含む)
四半期に1回チャネル別マージン率の推移を見て、段階的な下落がないかを確認。手数料改定・広告効率の低下・返品増加のどれが原因かを追跡マージン率推移チャート・異常チャネルの原因メモ

まとめ

  1. 売上順位とマージン率順位はほぼ逆順でした — 順位相関 -0.943。売上1位のチャネルがマージン率最下位(14.6%)、売上5位のチャネルがマージン率1位(67.2%)です。

  2. 逆転するのは率であって額ではありません。純マージン額の順位と売上順位の相関は0.771です — 額は規模を、率は効率を物語ります。両方を見る必要があります。

  3. 順位を逆転させたのは手数料ではなく広告費です。自社モールは手数料が最も安い(5.4%)一方で、広告費が最も高く(48.2%)、マージン率が最下位になりました。

  4. 自社モールは売上の73.6%で、マージンの49.0%しか生んでいません(-24.6ポイント)。それ以外のチャネルは、すべてマージン貢献が売上構成比を上回っています。

  5. 自社モール誘導プロモーションの余力は0%です。格差がすべてマイナスのため、まずやるべきは誘導ではなく自社モールの広告費構造を見直すことです。

このレポートを自社データで再現するための最小設定

項目値理由
売上基準返品・キャンセルを反映した純売上、全チャネル共通チャネルごとに基準が違うと1行目からずれる
コストの層販売・決済手数料 / 物流 / 広告 / 原価の4つすべて1つでも欠けると偽の純マージンになる
広告費の紐づけ媒体 → ランディング先チャネル(難しければ売上構成比で按分)紐づけないとチャネル比較そのものが不可能
純マージン率の定義100 − 手数料 − 広告費 − 原価(チャネルの純売上 = 100)チャネルの規模に関係なく比較できる
並び替え売上 → 純マージン率に切り替えて2回順位が逆転するかどうかが、このレポートのすべて
あわせて見る指標純マージン額の順位率だけを見ると規模の小さいチャネルを過大評価してしまう
役割の検証チャネル別の初回購入 / リピート購入の比率検証できなければ「獲得チャネル」はただのラベル

よくある質問

Q. チャネル別の純マージンはどのように計算しますか?

チャネルの純売上(返品・キャンセル反映後)から、販売・決済手数料、物流・フルフィルメント費用、チャネル帰属広告費、商品原価を順に差し引きます。計算そのものよりも、4か所に散らばった数字をひとつの表に集めることが肝心です。

Q. オープンマーケットの手数料と自社モールの手数料は、どうすれば公平に比較できますか?

チャネルによって手数料に含まれる範囲が異なるため、4つの層をすべて分解し、同じ基準で組み立て直す必要があります。このサンプルでそうしてみると、手数料が安いチャネルがむしろマージン率最下位でした — 抜け落ちていた層(広告費)が手数料より大きかったためです。

Q. 売上1位のチャネルに広告予算をもっと投じてもよいですか?

売上順位ではなく、純マージン率 × 成長余地で判断してください。マージン率が高いのに売上構成比が小さいチャネルが増額の最優先で、売上は大きいがマージンが薄いチャネルは広告効率の改善が先決です。

Q. マージンが薄いチャネルからは撤退すべきですか?

必ずしもそうではありません。新規顧客の流入が大きいチャネルは、獲得チャネルとして役割を分けることができます。ただし、そのチャネルから流入した顧客が実際にリピート購入しているかを確認できなければなりません。このサンプルのようにマーケット系チャネルで顧客を識別できない場合は検証そのものが不可能なので、その事実を明記しておくほうが誠実です。

Q. 自社モール限定ポイントは何%まで使ってよいですか?

上限は自社モールと比較チャネルのマージン率格差です。格差がプラスでなければ余力は生まれません。このサンプルは格差がすべてマイナス(-49.9~-38.5ポイント)だったため、余力は0%でした。感覚で決めず、まずこの数字を確認してください。


本レポートの数値は実際の取引データではなく、Laplaceのベンチマーク指標の分布を反映して生成したサンプル値です。特定の顧客企業の実数値ではありませんので、絶対値ではなく傾向を把握する目的でご参照ください。公開研究の数値は各項目に出典を記載しています。画面名や設定項目名は、リリースによって多少異なる場合があります。