「在庫があといくつあるか」はわかるのに、「いつ発注すべきか」はわからないブランドへ
そのとおりです。ほとんどのブランドがそうしています。EZAdmin や Sabangnet のような一元管理ソリューションで現在庫数を確認し、目に見えて減っている商品があれば発注をかける、というやり方です。

「在庫管理ですか?EZAdmin で数量を確認していますよ」
そのとおりです。ほとんどのブランドがそうしています。EZAdmin や Sabangnet のような一元管理ソリューションで現在庫数を確認し、目に見えて減っている商品があれば発注をかける、というやり方です。
ところが、この方法には構造的な問題がひとつあります。「あといくつ残っているか」は教えてくれても、「いつ、どれだけ発注すべきか」は教えてくれないという点です。そのため、次のようなことが繰り返されます。
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よく売れる商品が突然品切れ → 急いで発注したものの、入荷までのリードタイムのあいだ販売機会を逃す
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逆に売れない商品は倉庫に何百個も積み上がっているのに、それが問題だと誰も気づかない
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「なぜこんなに在庫資産が多いんだ?」という代表の問いに、SKU 単位で答えられる人がいない
本記事では、EZAdmin の在庫データを Laplace に連携して分析した事例をもとに、品切れと過剰在庫を同時に解消する3つの分析――安全在庫、発注点(ROP)、ABC 分析――をご紹介します。いずれも新たなシステムを構築する必要はなく、すでに EZAdmin に蓄積されている入出庫データだけで実現できる分析です。
まずは自社ブランドのセルフチェック
次の質問にひとつでも「わからない」があれば、ぜひ読み進めてください。
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今発注しなければリードタイム内に品切れになる商品がいくつあるか把握していますか?
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SKU ごとに安全在庫の基準ラインはありますか?あるなら、その数字は勘ですか、それとも計算ですか?
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在庫資産全体のうち、直近30日間で1個も出荷されていない商品の比率は?
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出荷量上位20%の商品とそれ以外の商品の在庫配分は、販売比率と合っていますか?
これらの質問に答えにくいのは、データがないからではありません。EZAdmin には、すでに SKU ごとの入出庫履歴がすべて蓄積されています。問題は、そのデータが「照会」用にしか存在せず、「判断」用に加工されていないことです。
分析1. 安全在庫(Safety Stock)――品切れの防衛ラインを数字で引く
概念
安全在庫とは、需要の変動や納期の遅れに備えて維持すべき最低限の在庫量です。「これだけは常に確保しておけば、急に注文が集中しても品切れにならない」という防衛ラインです。
ポイントは、この防衛ラインを勘ではなく出荷履歴の変動性から計算することです。
数式は難しそうに見えますが、ロジックはシンプルです。出荷量のばらつきが大きい商品ほど(σが大きいほど)、そして発注後に待つ期間が長いほど(リードタイムが長いほど)、余裕を多く持てということです。
重要なのは、3つの変数の性質がそれぞれ異なるという点です。
| 変数 | 性質 | どこから来るか |
|---|---|---|
| σ(出荷の標準偏差) | データ | 出荷履歴から自動計算――手を加える必要なし |
| リードタイム | 事実 | 発注→入荷の実際の所要期間――仕入先ごとに確認して入力 |
| Z | ポリシー | 「品切れをどこまで許容するか」という経営判断――ブランドが決めるべきもの |
σはデータが自動で計算してくれ、リードタイムは確認して入力すれば済みます。問題はZです。Z値に正解はなく、ブランドごとに異なるべきものです。設定方法は本記事の後半で詳しく取り上げます。
実際のデータではこう見えます
Laplace の安全在庫分析チャートは、SKU ごとの在庫の余裕分(現在庫 − 安全在庫)を表示します。あるD2Cブランドの実際の分析画面では、次のようになっていました。
余裕分がマイナスの商品が上位にずらりと並んでいました。これらはすでに安全在庫ラインを割り込んだ状態――需要が少し跳ねただけで品切れに直行する SKU です。しかも皮肉なことに、上位はすべてよく売れる主力商品でした。よく売れるから早くなくなり、発注が消化スピードに追いつかない、典型的なパターンです。
チャートの読み方
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バーなし/短い → 現在庫 ≈ 安全在庫、在庫補充の検討が必要
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バーが長い → 余裕分は十分、安全な状態
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マイナス → すでに安全在庫以下、すぐに発注が必要
すぐに取れるアクション
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余裕分マイナスの SKU リストを、発注担当者の週次ルーティンに組み込む。毎週月曜日にこのチャートを開くだけで、「火急の案件」リストが自動的に出てきます。
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σが特に大きい SKU には別途印をつける。出荷の変動が大きいということは、プロモーションや露出によって需要が大きく揺れるということ。マーケティングカレンダーと発注スケジュールを連動させる候補です。
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リードタイムは仕入先ごとの実測値で管理する。「だいたい1週間」ではなく、直近の発注案件の実際の発注日→入荷日の記録で設定してこそ、安全在庫が現実を反映します。
分析2. 発注点(ROP)――「いつ発注するか」への答え
概念
安全在庫が「どれだけ確保しておくか」だとすれば、発注点(ROP: Reorder Point)は「現在庫がいくつまで減ったら発注ボタンを押すか」の基準です。
ロジックはこうです。発注しても、入荷まではリードタイム分の時間がかかります。そのあいだも商品は売れ続けます。だから「リードタイム中に売れる量 + 安全在庫」分が残っている時点が発注のデッドラインなのです。それより遅れると、入荷前に在庫が底をつきます。
安全在庫分析と何が違うのか
ROP は安全在庫よりも保守的な(より早くアラートが鳴る)基準です。安全在庫分析ではまだ余裕があるように見える商品でも、ROP 基準ではすでに発注タイミングを過ぎていることがあります。リードタイム中の消費量までカバーするためです。
先ほどの事例ブランドでも、この差がそのまま表れました。同じ主力 SKU の余裕分が、安全在庫基準では-307だったのに対し、ROP 基準では-395でした。「足りない」ではなく、「リードタイム内の品切れがすでに確定している」という意味です。
特に目を引いたのは、本品に同梱されるノベルティや副資材の SKU が、ROP 不足の上位に大量にランクインしていたことです。ノベルティの出荷量は本品の販売に連動しますが、発注管理は本品ほど気を配られず、気づかないうちに底をつくケースが少なくありません。ノベルティの品切れは、本品の販売まで止めてしまいます。
すぐに取れるアクション
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発注の判断基準を「現在庫」から「現在庫 vs ROP」に切り替える。「5,000個残っているからまだ大丈夫」ではなく、「ROP が6,200なのに5,000個ならもう遅い」と判断の枠組みを変えます。
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ノベルティ・副資材の SKU を必ず ROP モニタリングに含める。本品中心の発想では見落としやすい死角です。
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ROP を下回る SKU 数の推移を週次指標にする。この数が増えているなら、発注サイクルそのものが販売スピードに追いついていないという早期警告です。
分析3. ABC 分析――在庫資産がどこに眠っているかを見る
概念
ABC 分析は、出荷量(または売上)への貢献度をもとに SKU を3つのグループに分ける、古典的ながら強力な手法です。
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Aグループ:出荷の大半を生み出す少数の中核 SKU(通常、累積出荷の~70-80%)
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Bグループ:中程度の貢献をする SKU
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Cグループ:出荷への貢献がわずかな、多数のロングテール SKU
実際のデータではこう見えます
事例ブランドの ABC テーブルで見つかったコントラストは劇的でした。
よく売れるAグループの商品は在庫がわずか23個で品切れ寸前なのに、月に1個しか売れなかったCグループの商品は975個も倉庫に積み上がっています。在庫があるべき場所にはなく、なくてもいい場所に眠っているのです。
このブランドの在庫回転率は全体で0.13(直近30日)でした。在庫資産に対する出荷が13%ということですが、この低い回転率の元凶こそが、出荷0なのに何百個も積み上がっているCグループの SKU でした。
ひとつ注意点があります。こうした状況では、在庫日数(DOS)のような平均指標が極端にゆがみます。売れない SKU の「限りなく無限に近い消化日数」が平均を押し上げるため、全体平均ではなく、必ず ABC グループ別に分けて見なければ実態はつかめません。
すぐに取れるアクション
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発注・安全在庫のポリシーをグループごとに差別化する。Aグループは高いサービス率で品切れを徹底的に防ぎ、Cグループは追加発注の停止を基本とします。すべての SKU に同じ物差しを当てることこそが、過剰在庫の根本原因です。
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Cグループのうち「出荷0 + 在庫大量」の SKU をデッドストック候補として切り分ける。特集セールでの消化、ノベルティへの転用、セット商品への組み込み、そして最終的には廃棄・処分まで、意思決定の対象に挙げます。倉庫費と在庫資産の金利だけがかかる在庫は、毎月静かに損益をむしばんでいきます。
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Aグループの SKU を安全在庫・ROP 分析とクロスチェックする。先の事例のように「Aグループなのに余裕分がマイナス」の SKU こそ、この分析で最優先のアクション対象です。売上への貢献が最も大きい商品が、最も品切れリスクの高い状態にあるからです。
Z値、自社ブランドはどう決めるべきか
先ほど、安全在庫の3つの変数のうち、σはデータ、リードタイムは事実、Zはポリシーだとお伝えしました。Z値の設定は、そのまま在庫戦略です。
Z値の意味:サービス率
Z値とは、「需要が跳ねたときに品切れなしで乗り切れる確率(サービス率)」を統計的に換算した係数です。
| サービス率 | Z値 | 意味 |
|---|---|---|
| 90% | 1.28 | 10回に1回は品切れを許容 |
| 95% | 1.65 | 20回に1回は品切れを許容(一般的なデフォルト) |
| 98% | 2.05 | 50回に1回 |
| 99% | 2.33 | 100回に1回 |
注意点:サービス率と安全在庫量は比例しません。サービス率を95%→99%へと4ポイント上げると、Zは1.65→2.33となり、安全在庫は約41%増えます。最後の数%の品切れを防ぐための在庫コストが指数関数的に膨らむ構造のため、「とにかく高く」が正解ではありません。
判断基準:品切れコスト vs 在庫維持コスト
Z値とは結局、この天秤です。
Zを上げるべきケース(品切れコストが大きい商品):
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マージンが高く、1回の品切れが大きな機会損失になる商品
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代替品が多く、品切れすると顧客が競合に流れてしまう商品
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広告を出している商品――品切れ中の広告費はそのまま消えてしまいます
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オープンマーケットでの表示順位に販売の継続性が影響する商品
Zを下げてもよいケース(在庫維持コストが大きい商品):
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消費期限や季節性があり、売れなければ廃棄になる商品
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単価が高く、在庫に多くの資本が眠ってしまう商品
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倉庫費の負担が大きいかさばる商品
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需要がすでに減少傾向にある商品
実務での推奨:ABC グループ別に差をつけて適用
SKU ごとに個別のZ値を決めるのは現実的ではありません。実務では、ABC グループ別にZ値を差をつけて適用するのが最も効率的です。
| グループ | 推奨サービス率 | Z値 | 考え方 |
|---|---|---|---|
| Aグループ | 97~99% | 2.05~2.33 | 売上の大部分――品切れコストが圧倒的に大きい |
| Bグループ | 95% | 1.65 | 標準のデフォルト |
| Cグループ | 85~90% | 1.04~1.28 | 品切れしても損失はわずか――在庫コストの削減を優先 |
ここに季節要因を加えます。大型連休やブラックフライデーなど、需要の急増が見込まれる時期の前にはAグループのZ値を一段階引き上げ、シーズン終了後に元に戻します。Laplace では、カスタム数式タブでZ値とリードタイムを直接変更できるため、こうしたポリシー変更を数式の再構築なしで反映できます。
出発点が必要なら
まだ精緻なポリシーがないなら、こう始めてみてください。全 SKU をZ=1.65(サービス率95%)でスタート → 1か月運用 → 品切れが発生した SKU はZを引き上げ、余裕分が過剰に残り続ける SKU はZを引き下げる。Z値は一度決めたら終わりの定数ではなく、運用しながら調整するダイヤルです。
3つの分析をひとつに:在庫運用マトリクス
3つの分析をクロスさせると、SKU ごとのアクションが自動的に整理されます。
| 余裕分マイナス(安全在庫/ROP 未達) | 余裕分十分 | |
|---|---|---|
| Aグループ(中核 SKU) | 🔴 最優先で発注――売上に直結する品切れリスク | ✅ 正常――現状維持 |
| Bグループ | 🟡 定期発注サイクルに組み込む | ✅ 正常 |
| Cグループ(ロングテール) | ⚪ 発注保留――本当に再発注が必要かから検討 | 🔵 デッドストック点検――消化/処分戦略 |
ポイントは右下です。Cグループなのに在庫が潤沢な商品は、「安全な状態」ではなく「資本が眠っている状態」です。品切れリスク(左上)と過剰リスク(右下)を同じ画面で同時に管理することが、このマトリクスの目的です。
この分析をどう始めるか――EZAdmin × Laplace
この事例の元データは特別なものではありません。EZAdmin にすでに蓄積されている SKU ごとの入出庫履歴です。Laplace に EZAdmin を連携すると、このデータが自動で収集・標準化され、上記の分析がダッシュボードとして構成されます。
Step 1. EZAdmin を連携 → 在庫履歴データを自動収集(入庫・出庫・期末在庫、SKU 単位)
Step 2. 在庫分析ダッシュボードで基本指標を確認――入出庫の推移、在庫水準、在庫回転率、在庫金額。ここで「在庫金額は増えているのに出荷は横ばい」なら、次のステップが必ず必要な状態です。
Step 3. 安全在庫分析チャートで余裕分マイナスの SKU を確認 → 今週の発注リストを確保。Z値・リードタイムはカスタム数式タブで自社基準に調整(上記のZ値ガイドを参照)
Step 4. 発注点(ROP)分析で「リードタイム内に品切れ予定」の SKU までカバー――ノベルティ・副資材が含まれているかを確認
Step 5. ABC 分析テーブルでグループ別の在庫配分を点検 → Cグループのデッドストック候補を抽出、Aグループの品切れリスク SKU をクロスチェック、グループ別にZ値を差をつけて適用
ダッシュボードでは、各分析の横に計算式とチャートの読み方ガイドがテキストカードとして並べて配置されているため、在庫担当者ではない代表やマーケターが見ても、「このチャートで何をすべきか」がすぐに読み取れます。在庫データが物流チームだけのものではなく、全社で見る経営指標になる瞬間です。
在庫管理の目的は、「在庫を多く持つこと」でも「少なく持つこと」でもありません。売れる商品には十分に、売れない商品には最小限に――この配分をデータで合わせることです。その判断に必要なデータは、すでに EZAdmin に蓄積されています。いよいよ、照会するためのデータを、判断するためのデータへと変えるときです。
Laplace に EZAdmin を連携して、自社ブランドの安全在庫・ROP・ABC 分析を今すぐ確認してみてください。